原因は歯以外にあり「非歯原性歯痛」の治療で痛みが消える

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 歯が痛い。でも、検査をしても歯の異常が見つからない。こんな時、どういう原因が考えられるのか?

「原因不明の歯痛で悩む患者さんは実は多くいらっしゃいます」

 こう話すのは、日本大学松戸歯学部付属病院口・顔・頭の痛み外来責任者の小見山道教授だ。同外来は開設して12年。原因不明の歯痛で悩み、どの歯科医院でも治療に結びつかなかった患者が多く来院する。

 虫歯など原因がはっきりしている歯痛は、その治療で痛みが治まる。一方、歯に原因がない非歯原性歯痛もある。

「痛みの部位と原因部位とが一致しない。たとえば狭心症などでは、心臓部の痛みを左上腕部の痛みと認知することがあります」

 55歳の女性は、1カ月前から左下の歯が痛く、抜いて欲しいと開業医を受診。しかし「どうも様子がおかしい」と、開業医は小見山教授の外来に紹介状を書いた。

 この女性は痛い歯の周辺に炎症性の所見がなく前後の歯、上顎の歯にも問題がなかった。歯に問題があれば麻酔で痛みが消えるが、痛む歯及び周辺の歯に局所麻酔をしても痛みが消えなかった。

「ところが、噛む筋肉を触ると痛みが出ました。この患者さんの歯痛は、咬筋や側頭筋といった噛む筋肉に炎症が生じていたことが原因でした」

 これを筋・筋膜性歯痛と言い、非歯原性歯痛の原疾患として多くを占める。原因不明の歯痛の78.8%に頭頚部の筋・筋膜痛が併発しており、頭頚部筋・筋膜痛の49.6~85%は関連痛で非歯原性歯痛を引き起こすとも報告されている。

「この患者さんの治療のターゲットは歯ではなく筋肉。マッサージや温め、くいしばらない、などで、2週間後には疼痛が寛解しました」

■三叉神経痛で歯に電気が走るような痛みが起こる

 65歳の男性は、半年ほど前から、洗顔時に顔面、左上の歯の辺りに、電気が走るような痛み(電撃痛)が起こるようになった。自宅近くの歯科医院で症状は改善せず、むしろ痛みを認める頻度や持続時間が増加した。

 小見山教授が診ると、前出の女性と同様に周囲の歯に異常所見はなし。唇への刺激で痛みが生じたため、神経の根元へ麻酔を打つと痛みの発作が消えた。診断名は、三叉神経痛。三叉神経痛の薬で、3日目には痛みが激減した。

「加齢とともに血管が動脈硬化を起こし、神経が圧迫され三叉神経痛に至った。電撃痛は典型的な症状です。三叉神経痛が疑われる場合、脳腫瘍が否定できないため、必ず画像検査を行います。薬のほか、脳神経外科やペインクリニックで神経ブロック、神経外科的手術が検討されます」

 48歳男性はアイスピックで突かれるような激痛が歯から始まり、頭の横、右顔面、目の奥に広がった。

 発作は50~60分で治まり、発作時以外は全く症状がない。

「原因は、群発頭痛でした。内頚動脈に一過性の神経原性炎症が生じ、血管が腫れ上がる。群発頭痛の薬ゾルミトリプタンの服用で翌日には寛解しました」

 片頭痛で歯痛が起こっているケースもある。また、上顎洞性歯痛、心臓性歯痛(狭心症、心筋梗塞)、精神疾患なども非歯原性歯痛の原疾患になる。

 もしも、と思ったら、非歯原性歯痛診療ガイドラインを事前資料にして、歯科以外の科(脳神経外科、神経内科、頭痛外来、循環器科など)と連携して治療を行っている歯科を受診しよう。

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