がんと向き合い生きていく

恐怖のない安寧な死はある 104歳の女性患者に教えられた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 自然死では、恐怖のない安寧な死はあるのだ……私はそう思いました。

 そして、ロシア生まれの動物学者、E・メチニコフが約110年前に書いた「生と死」に登場する、あるおばあさんの話を思い出しました。

「もしおまえが私ほど長生きすれば、死が怖くなくなるばかりか、死にたいと思うようにもなる。眠りたくなるように、死にたくなる。……明らかに、ここで精神的能力を十分に保持している100歳の老女に、発達した自然死の本能が見られた。眠りの要求に似た、それほど年をとっていない人々にはわからない新しい感情があらわれた」

 これは本当のことだと思います。人生が中断されるがんの終末期において、死の恐怖を覚え、悩まれる方はたくさんおられます。たとえ自分で「死の受容はできている」とは言っていても、いざとなった時はそれが心底からではないと思われる患者はたくさんいるのです。

 がんの場合でも安寧でいられる方法を探っている私は、「死のすべてが恐怖のあるものではない」ことをRさんから教わったのです。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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