中高年の意外な死因

転倒・転落で年間645人 ラーメンの汁に滑って亡くなる人も

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「自分はまだ若いから」と思っている中高年の皆さん、思わぬところで足をすくわれるかもしれません。

 2016年の統計によれば、転倒や転落で命を落とした中高年男性(40~64歳)が、なんと645人もいたのです。しかも、その中身は、かなり意外でした。

 真っ先に思い浮かぶのは、雪による転倒でしょう。少し雪が降っただけでも、東京などでは、転んで救急車に運ばれる人が続出します。

 ところが、それで亡くなる人は意外と少ないのです。実際、2016年の中高年男性の死者はゼロでした。

 一番多いのが、「スリップ、つまずき及びよろめきによる転倒(247人)」、しかもそのうちの103人が、自宅で滑ったり、つまずいたりして、死んでいます。また職場や店舗などで亡くなっている人もいます。「社員食堂の食器返却カウンター前で、床にこぼれていたラーメンの汁で滑って転倒」「コンビニを出たところ、入り口付近に落ちていたアイスクリームに滑って転倒」などなど。かなり残念な死に方です。

 2番目に多いのが「建物からの転落(111人)」、これも53人が家で死んでいます。屋根の修理や雪おろしの最中に落ちて死んだのです。

 3番目が「階段及びステップからの転落・転倒」で106人。これもまた、66人が自宅の階段を踏み外して死んでいます。

 そして4番目が「はしごからの転落」の34人。やはり、18人が自宅で死にました。庭木の手入れをしようとして落ちた、といったケースです。

 転倒・転落とは関係ありませんが、自宅の風呂で溺死した人が173人いました。

 やはり飲酒後の入浴がよくないようですが、降圧剤を服用している人も、溺死のリスクが高いといいます。

 入浴による降圧効果と合わさって、血圧が急激に下がって、浴槽内で失神することがあるからです。

 こうしてみると、中高年男性にとって、自宅はかなり危険な場所だということが分かります。

 しかし働き方改革で、いつまでも会社に残っているわけにはいきませんし、後輩たちは飲みに付き合ってはくれません。もう若くはないと諦めて、“動作はゆっくり、慎重に”を心がけるしかなさそうです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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