意外に知らないホルモンの実力

ハゲにも影響…50代の男性ホルモンは20代の半分に減少する

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 男性を“男らしく”させている「男性ホルモン(アンドロゲン)」。コレステロールを原料としてつくられる「ステロイドホルモン」のひとつだ。男性ホルモンは3種類あるが、代表されるのが最も分泌量が多く、作用が強い「テストステロン」。男性の場合、95%が精巣で、5%が副腎でつくられ、血液中に放出されている。

 男性が一生のうちで最も分泌が高まるのは、母親の胎内(妊娠6~24週)にいるときと思春期だ。このときに男として形づくられ成長する。東京都立多摩総合医療センター内分泌代謝内科の辻野元祥部長が言う。

「母親の胎内では、誰もが女性的身体で発生します。それが妊娠2カ月ごろになると、男性特有のY染色体上にあるSRY遺伝子の働きでつくられた精巣から大量のテストステロンが分泌されます。その“アンドロゲンシャワー”を浴びることで、男性生殖器の発育が促され男性化するのです」

 そして、思春期にも大量に分泌され、精巣の発達、陰毛、筋肉質な骨格など大人への体の性差(2次性徴)が表れる。

 さらに男性ホルモンの作用は、このような見た目の男性化だけでない。脳にも働きかけて、男らしい積極的な行動を促すという。チャレンジ精神や闘争心、競争心のようなアグレッシブな行動を活性させるのだ。

「とはいっても、テストステロンは女性でも、男性の5~10%程度ですが副腎や卵巣から分泌されており、同様に積極性や性欲にも関係します。いわゆる“肉食系”といわれる男勝りのヤリ手の女性は、テストステロン値が普通の女性より高いかもしれません。いずれにしても“元気の源”のホルモンといえます」

 ところが男性の場合、分泌量は20代をピークにゆるやかに落ちていき、50代では半分ほどに減少する。そうなると女性の更年期障害と同じような状態になる場合がある。イライラ、抑うつ、寝汗、不眠、頻尿、耳鳴り、勃起障害、性欲低下など、さまざまな症状が出る。

「治療では、ホルモン補充療法がありますが、男性ホルモンを増やすと前立腺肥大や前立腺がんのリスクになるので、きちんと専門医を受診すべきです。また、夜にスマホやパソコンでブルーライトを浴びると男性ホルモンが低下します」

 男性ホルモンは、男性型脱毛症(AGA)にも影響する。テストステロンが変換されてつくられるジヒドロテストステロンが原因になるからだ。処方薬のAGA治療薬は、その変換を阻害する薬だ。

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