中高年の意外な死因

室内も危ない…自宅での凍死者は74人で低体温症は116人も

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 冬が近づいてきました。「猛暑の年は厳寒になりやすい」と言われますが、今年はどうでしょうか。もし例年並みに寒かったら、気をつけなければいけないのが「凍死」です。

「嘘ばっかり」と思うかもしれません。山岳遭難ならいざ知らず、日常生活で凍死なんて、めったになさそうです。しかし凍死は、熱中症よりもずっと危険なのです。

 2016年の統計によれば、40~64歳の中高年男性で凍死した人は157人でした。死因分類上は「自然の過度の低温への暴露」という項目になっています。それと対になっているのが「自然の過度の高温への暴露(78人)」で、こちらが「熱中症」による死亡に相当します。凍死者のほうが2倍も多いわけです。

 寒い環境に数時間もさらされていると、次第に体温が奪われていきます。人間の体温は36度から37度近辺。それが35度を下回ると、筋肉がこわばり、刺激に対する反応が鈍ってきます。さらに下がれば思考力や判断力が失われ、30度を切ると昏睡に陥って、死の淵から戻ってこられなくなるのです。

 真冬の夜の、屋外での死を想像してしまいますが、実際には約半数の74人が自宅で凍え死んでいます。暖房がついていない室内で、布団や毛布もかけないまま眠ってしまったのです。酒に酔っていたのかもしれません。当然ながら、家族がいる人よりも、一人暮らしのほうがリスクが高いと言われています。個人差もあります。とくに痩せている人や、筋肉質で皮下脂肪が少ない人は、メタボ体形と比べて寒さに弱いので要注意です。

 よく似た死因に「低体温症」という項目があります。これで亡くなった中高年男性は116人でした。「自然の過度の低温」のほうは、とくにこれといった病気のない人が、寒さが原因で死んだ場合に使われます。それに対して糖尿病や心臓病などの慢性疾患や、風邪などの感染症にかかっている人が寒さで死んだときは、こちらが使われるのです。

 それらの病気で亡くなったわけではありませんが、病気のせいで基礎代謝量が落ちて体温調整がうまくいかなくなるため、ちょっとした寒さでも凍死することがあるのです。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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