天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

左心耳切除術のための新たな治療器の開発を進めています

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 いま取り組んでいるのは「自動吻合器」です。胃や腸といった消化管の手術では、30年以上前から自動吻合器が使われています。たとえば、腸管を切り取った場合、その端と端の切り口同士を結合させる必要があります。その際、かつては針と糸を使って手縫いをしていましたが、10~20分くらいかかります。一方、腸管同士をホチキスのようなステープラーで接続する自動吻合器を使うと、5分程度で完了します。しかも、手縫いした場合とクオリティーに差はありません。

 この自動吻合器を左心耳切除術で使えるように改良を重ねているのです。左心耳切除術は複雑な手技を必要とする手術ではないので、従来から消化管の手術で使われている自動吻合器を少し改良しただけで十分に使用できます。なんとしても、左心耳を確実に切り取って縫い込めるような新しい自動吻合器を完成させたいと考えています。ただ、そうした新しい機器に対し、メーカー側は価格を高く設定しようとします。少しでも早く利益を出し、開発費を回収したいと考えるのは当然でしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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