中高年の意外な死因

年間2213人が肺炎で死亡 風邪やインフルエンザが入り口に

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 インフルエンザの季節の到来です。私は毎年ワクチンを打ってもらっていますが、皆さんはどうされていますか。

「寝ていれば治る」は、若いうちだけ。年をとってくると、だんだんと重症化しやすくなってきます。もちろん死ぬことだってあります。

 2016年にインフルエンザで亡くなった人は、老若男女合わせて約1500人に達しました。多くは高齢者ですが、我々の世代も安心してはいけません。このうちの95人は中高年男性(40~65歳)だったのです。

 インフルエンザとよく混同されるのが「急性上気道炎」、いわゆる「風邪」です。インフルエンザと比べれば危険性はずっと低いのですが、それでも中高年男性17人が死にました。

 中でも、とくに気をつけなければいけないのが「急性喉頭蓋炎」と呼ばれるもの。急速に喉の腫れが進んで息ができなくなり、窒息死するのです。17人中9人は、これで死んでいます。

 とはいえ、インフルエンザも風邪も、そんなに怖い病気ではありません。それらが引き寄せる「肺炎」こそが、本物の恐怖です。なんと2213人の中高年男性が、感染性の肺炎で犠牲になりました。

 インフルエンザや風邪で弱った気管や肺は、病原菌にとって格好のターゲットです。ところが肺炎の原因となる細菌やウイルスは、種類が多いのです。

 しかも困ったことに、肺炎の症状はどれも同じで、目の前の患者がどの病原菌に侵されているのかを特定することは、現代医学をもってしてもかなり難しいのです。

 そのため原因菌が特定されるまでは、多くの病原菌に広く効く(逆に言えば特定の菌にはあまり効かない)抗生物質を使って治療を行うことになります。しかし肺炎の進行をうまく抑えることができなければ、原因菌が判明する前に命を落とすこともあるわけです。

 また、たばこを吸っている人は常に気管支や肺が荒れているため、肺炎でやられるリスクが高まります。1日20本吸っている人は、吸わない人の3倍もかかりやすいといわれています。

 肺炎から身を守るには、まずはインフルエンザや風邪にかからないことです。だからワクチンは打っておいたほうが、多少は安心できますよ。

永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

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