「補完代替医療」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。一般的には、科学的根拠のある標準的な治療の代わりに用いられる民間療法を指し、特にがん治療で注目されることが多いと思います。
がんの治療というと、「効果があまり期待できないうえに副作用が強い」というイメージを持たれる方も少なくないでしょう。副作用で苦しむことなくがんを治療したいと強く願う人にとっては、ハーブ療法であるとか、免疫療法、あるいはビタミン療法などは魅力的に思えるかもしれません。しかし、その有効性が科学的に証明されている補完代替医療は存在しません。
そんな中、がん患者における補完代替医療の選択状況と、標準がん治療への影響や生存について検討した論文が、2018年10月14日付で米国医師会のがん専門誌に掲載されました。
この研究では、補完代替医療を受けた258人のがん患者と、標準がん治療を受けた1032人が比較されています。年齢や、病気の期間、がんの種類などを考慮して解析した結果、代替医療を受けた人では、外科手術、抗がん剤療法、放射線治療、ホルモン療法を拒否する人が統計的に意味のある水準で多いことが示されました。
また5年生存率は、代替医療を受けた人で82・2%、標準がん治療を受けた人では86・6%と、補完代替医療を受けた人で、統計学的に意味のある水準で低いことが示されました。さらに補完代替医療を選択した人では、死亡リスクも1・4倍多い傾向が示されました。
特に外科手術などは生命予後に大きな影響をもたらすケースも多く、補完代替医療の安易な選択はリスクを伴うということに注意が必要かもしれません。