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動脈硬化と関係あり 下の血圧が高めの人は血管が柔らかい

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回は上の血圧と年齢の関係を見てきましたが、下の血圧と年齢の関係はどうなっているのでしょう。

 再び同じ国民栄養調査の結果です。20歳代の男性の下の血圧の平均は74.3㎜Hg、40歳代で82.6㎜Hg、50歳代で86.0㎜Hgと上昇傾向ですが、60歳代では82.9㎜Hg、70歳以上では78.3㎜Hgと減少傾向になっています。上の血圧と異なり、50歳代をピークに年齢とともに下降に転じているのがわかります。

 女性も同様な傾向ですが、様子が少し異なります。20歳代で68.1㎜Hg、60歳代までは年齢とともに上昇し79.2㎜Hgとピークを示し、70歳以上で76.6㎜Hgと減少傾向になります。

 この上の血圧、下の血圧と年齢との関係の違いは、加齢による動脈硬化と関係しています。高齢になるにしたがって血管の動脈硬化が進むと血管が硬くなります。軟らかい動脈硬化のない血管では心臓が休んでいるときには血管が縮んで血圧を維持するのですが、動脈硬化で硬くなった血管は血管が縮むことができず、太いままの血管を少ない血液が流れるため、その分、心臓が休んでいるときの下の血圧が下がってしまいます。

 男性の60歳以上、女性の70歳以上で下の血圧は下がる傾向にあります。これは「血圧が低くなって大丈夫」というわけではなく、むしろ動脈硬化が進んで血管が硬くなっていることの反映かもしれません。逆に言えば、下の血圧が高めの高齢者は血管が軟らかいのかもしれません。

名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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