私の説明を聞いたMさんはすぐにニコッと笑みを浮かべ、「先生、納得です。やってみます」と返事をしてくれました。なんと、いきなり「安楽死させて」と飛び込んできた患者さんが、30分後には笑顔になって抗がん剤治療を行うことになったのです。
さらに、治療中に調子が悪くなった時は入院できることを保証し、Mさんはとても安心されたようでした。診察室を後にされる時、Mさんは「いま家族は犬1匹だけです。犬が死ぬ前に自分は死ねないのです。犬と一緒に安楽死させていただくつもりでした」と笑っていました。
■担当医は一緒に悩んだのだろうか
Mさんが副作用で治療を断った時、大学病院の担当医から「あなたがそう思うならやめていいですよ」と言われ、他の治療法などの提示はありませんでした。そこから、Mさんの中で「もう手だてがない」という思い込みが生まれ、「安楽死」という考えにつながっていったように思うのです。
がんと向き合い生きていく