日本人男性の死因8位 息苦しいなら慢性閉塞性肺疾患を疑え

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 階段を上ると息が切れる。坂道を歩くのがつらい。よく風邪をひく――。もしこれらの症状に当てはまるようなら、COPD(慢性閉塞性肺疾患)かもしれない。

「COPDは症状がかなり進行するまで、気付かない人が大半です。その大きな理由として、COPDがどういう病気かを知っている人が少ないことが挙げられます」

 こう言うのは、呼吸器疾患を専門に診る「池袋大谷クリニック」の大谷義夫院長だ。

 COPDは、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称だ。原因の大半はたばこで、長年の喫煙習慣によって肺の中の気管支に慢性的に気管支炎が起こる。

 さらに、気管支が枝分かれした奥にある小さな袋「肺胞」が破壊され、肺気腫に至る。

「喫煙者の15~20%が発症します。禁煙をしてもたばこの影響はその後、何年も残るので、“今は吸っていない”という場合もリスクは高い。また、非喫煙者であっても、たばこの煙に頻繁にさらされる環境にいれば、発症のリスクがあります」(大谷院長=以下同)

 症状は咳や痰、ゼェーゼェーヒューヒューといった喘鳴。呼吸機能が低下するので、階段を上ったり坂道を歩いたりと体を動かした時に息切れが生じる。症状が進むと「同僚と話しながら歩くだけでも息が切れ、同僚に付いていけない」といったふうに、健康な人なら何でもないことでも苦しさを感じるようになる。

 一度破壊された肺胞は元に戻らず、治療を受けても“今の状況”が変わるわけではない。治療を受けず、喫煙もやめなければ進行していく一方で、命に関わる。

「肺炎、肺がん、肺線維症などを合併しやすくします。COPDは全身疾患であり、骨粗しょう症、筋肉量低下によるサルコペニア、糖尿病、心臓病など多臓器の疾患の発症リスクを上げます」

■治療を受けているのは推定患者数の20分の1

 ところが、COPDがあっても適切な診断・治療に結びついていない人が多い。大規模な疫学調査によると、日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%で、推定患者数は530万人。しかし、治療患者数は26万人と、20分の1ほど。

 一方で、厚労省の統計では、2017年のCOPDによる死亡者数は1万8500人を超え、1995年以降で過去最多だった。死亡順位は男性で8位になる。

 その理由は第1に、冒頭に挙げた通り認知度の低さだ。COPDの認知度を調べた調査では、COPDを「知らない」と答えた人が74%に上った。

 第2に、慢性的な疾患のため、症状の進行はジワジワとゆっくり。「息苦しい。呼吸器に問題があるのでは」と気付きそうな段階でも、本人はその息苦しい状況に慣れてしまい、見過ごしてしまう。「たばこのせい」とは思いつかず、「年のせい」にしてしまうケースもよくある。

 第3に、市町村での健診では肺機能の検査が組み込まれていないので、呼吸器の機能をチェックする機会が少ない。

「COPDの治療は禁煙が大前提。その上で気管支拡張薬や吸入ステロイド薬などの薬物療法、呼吸リハビリテーション、在宅酸素療法や小型の人工呼吸器とマスクで呼吸を助ける換気補助療法、症例によっては手術などが検討されます。早く治療を開始すれば、それだけ呼吸機能を高く保つことができます」

 喫煙習慣がある人は、自分の呼吸機能が本当に正常なのか、まずチェックすべきだ。すでに息苦しさを感じている場合は、呼吸器内科の受診を。

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