人は遺伝子の奴隷なのか

ビタミンCの吸収と胃がんや早産にもかかわる2つの遺伝子

ビタミンCは体内ではつくれない
ビタミンCは体内ではつくれない(C)日刊ゲンダイ

 ビタミンCと聞くと、若さや爽やかさをイメージする人も多いはずだ。

 実際、柑橘類やピーマンなどに豊富に含まれるビタミンCには細胞を元気にするさまざまな働きがある。コラーゲンの合成を促進したり、活性酸素を消去したり、副腎皮質ホルモンの合成を促進してストレスを緩和する。

 胃がんや肝臓がんの発がん物質であるニトロソアミンの生成を抑え、体に入り込んだ異物や薬物を代謝する酵素やタンパク質の維持に努めることもわかっている。不足すると血管が弱くなって出血しやすくなる壊血病にかかりやすい。なくてはならない栄養素である。

 そんなビタミンCは体内でつくることができない。水に溶けやすく、熱や光にも弱い。そのため、日本人の食事摂取基準(2015年度版)では15歳以上の男女は100ミリグラム/日摂取することが推奨されている。

 ところが、同じようにビタミンCを取っても人によって、吸収しやすい人と吸収しにくい人がいることがわかってきた。原因はビタミンCを細胞内に運ぶSVCT1とSVCT2と呼ばれる2つの遺伝子にある。国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「SVCT1は肝臓や肺、腎臓、腸、皮膚にあって、SVCT2よりも最大取り込み速度が高く、体内のビタミンC濃度を一定に保つ働きをします。一方、SVCT2は脳や目、肝臓にあり、SVCT1より親和性が高く、低濃度のビタミンCを効率的に取り込む役割があります。この2つの遺伝子を例えると料理用の計量スプーン。前者が大スプーンなら後者が小スプーンというわけです。これらが状況に応じて、使い分けられるのです」

 ところがこの2つの遺伝子が壊れると、その壊れた場所によってビタミンCの吸収に大きな差が生まれる。結果、同じようにビタミンCを取っていても体に吸収される量に差が出る。

「ビタミンCを吸収しにくい遺伝子を持っている人は、ビタミンCがすんなりと細胞に入っていかず、遺伝子が正常な人のようにコラーゲンの合成の促進や細胞をさびさせる活性酸素の消去がうまくいかずに皮膚などの老化が進む場合もあるのです」

 この遺伝子が欠損している部位によっては、ビタミンCの吸収には差はないものの、胃がんや早産、緑内障などの発症に関係する可能性があることもわかってきているという。

 どの栄養素を、どれだけ食べたらいいのか。それも少なからず遺伝子が関係しているということだ。

関連記事