少子化の裏で加速するY染色体の退化 人類は絶滅危惧種?

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「もちろん、たった38年間でY染色体上の精子の数に関係する遺伝子が減少し変異したのではありません。食品添加物やインスタント食品の容器や塗料、農薬、電磁波、肥満やストレス、生活習慣などの環境要因によって、遺伝子変異を伴わずに遺伝子の発現パターンや細胞の性質を変えるような後天的な変化が起きていると思われます」

 では何が精子を劣化させたのか? 理由のひとつとして「一夫一妻制」という結婚形態が考えられる。精子競争がないため、本来なら淘汰されるべき弱い精子の遺伝子やY染色体が次世代に受け継がれてしまうからだ。

「例えば、決まった相手をつくらない乱交のチンパンジーの精子は、運動能力が非常に高いことが知られています。この場合、雌は必然的に複数の雄の精子を受け入れます。そのため、精子はひとつの卵子に到達するために激しい競争にさらされます。結果、運動能力の高い優秀な精子しか次世代に生き残れません。一方、絶滅危惧種であるゴリラは、ボスが雌を独り占めする一夫多妻制です。精子間の競争は存在しないため精子の絶対数は少なく、1回の射精当たりの精子数もチンパンジーの5分の1程度とされます」

2 / 4 ページ

関連記事