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国際医学誌で報告 定期的ウオーキングで認知症リスク低下

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 以前、「定期的なウオーキングで肺炎死亡のリスクが低下」という論文を紹介しましたが、認知症予防にも効果があるのではないかという論文が、高齢精神医学分野の国際誌に2018年10月22日付で掲載されました。

 この研究では、65歳以上の日本人1万3990人が対象となりました。被験者に対して1日の歩行時間を調査し、「0.5時間未満」「0.5~1時間」「1時間以上」の3つのカテゴリーに分類しています。さらに公的介護保険データベースから5.7年の情報を集め、歩行時間と認知症発症との関連性が検討されました。なお結果に影響を与えうる年齢、性別、教育水準などの因子で、統計的に補正を行って解析をしています。

 解析の結果、認知症の発症リスクは、1日の歩行時間が「0.5時間未満」の人と比較して、「0.5~1時間」で19%、「1時間以上」で28%、統計学的にも意味のある水準で低下することが示されました。

 とはいえ、1日の歩行時間が長い人は健常者である可能性が高く、もともと認知症を発症しにくい人かもしれません。したがって、この研究結果のみで因果関係を決定づけることは難しいといえます。

 2018年5月には、「認知症患者に対して、やや強めの有酸素運動や筋力トレーニングを行っても認知機能に対する有効性は定かではない」という論文が英国医師会誌に報告されています。ウオーキングなど身体活動量を増やすことで認知機能が改善するかどうか、現段階では明確ではありません。

 ただ、適度な身体活動は健康状態に良い影響を与える可能性は高く、少なくとも健康を害するものではありません。無理のない範囲で、楽しみながらウオーキングができるといいでしょう。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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