ステージⅣがん治療を断るとどうなる

妻と息子はがん治療拒否という私の決断を無言で受け入れた

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 がん宣告を、私が一番最初に伝えた相手は、妻だった。妻は無言で私の決断を受け入れ、44歳になる息子も、妻同様の態度を示してくれた。

 今の社会では「がん治療を受けない」という決断を下すには、まだまだハードルは高い。医師は治療に使命感を持っており、家族を説得し、ともかくなんらかの治療を“強要”してくる。

 7月に肺腺がんの手術を受けた女優の東てる美さん(62)がテレビのワイドショーで、抗がん剤治療のために、約3カ月入院することを明かした。彼女は5月にテレビの医療番組で受けた検査で肺に影が見つかり、その後、ステージ1bの肺腺がんと診断された。7月に5時間に及ぶ手術を行い、左肺のかなりの部分を摘出した。彼女は今回の治療について、こう話していた。

「実はもっと楽かと思ったけど、開けてみたら、リンパにも1つがんがいました。1bで切ったら2bに昇進していました。予防のためですが、10月の終わりから抗がん剤とも闘っていきます」

 早期発見だったはずのがんも1度の手術では済まなかった。母親をがんで亡くし、その母親が抗がん剤治療で苦しんでいる姿に接していた彼女は最初、治療を受けないことも考えていた。その彼女の考えを変えたのがお嬢さんだった。お嬢さんは泣きながら治療を受けるように訴えたというのだ。私も家族に泣いて治療を勧められたら、治療を受けない決意を通せただろうか。

 治療によってがん細胞が縮小しても、治療しなかった場合との比較はできない。私の知っている多くの医師、そして今回私を担当した4人の医師は“がんを治療しない”という選択を理解できなかったし、がんを治療しないとどうなるかを分からなかった。

 私の決断に対し、家族や友人たちが危ぶむことなく納得してくれたことが、私には一番うれしいことだったし、大きなことだった。

笹川伸雄

笹川伸雄

ジャーナリスト。1946年、宮城県生まれ。医、食、健康のジャンルを得意とし、著書に「妙薬探訪」(徳間文庫)など

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