Fさんは少し怪訝に思って、「本人は本当に気持ちがいいと思っているのでしょうか?」と尋ねてみました。すると、R看護師は「ええ、体全体がとってもリラックスされて、気持ちがいいと言っていますよ」と答えたそうです。
この話をFさんから聞いた私は、重症心身障害者を長年ケアされている医師である高谷清氏の著書「重い障害を生きるということ」(岩波新書)を思い出しました。
「脳の形成がなくとも脳が破壊されていても、本人が気持ちよく感じる状態は可能なのだ。……苦痛がなく、安心できる環境において、『からだ』自体が自分の存在は気持ちがよいと感じているであろう。ここに、生きているもっとも基本的な喜びがあるのだろうと思う。……気持ちがよい『からだ』は『いのち』が気持ちよく存在していることであろうし、『こころ』も安心しているだろうと思う」
がんと向き合い生きていく