コーヒーを飲みながら、たばこをスパスパ吸う――。昔の映画やテレビドラマに登場する新聞記者や刑事には、こうしたシーンが多かった。かつての不良少年たちにとっても、コーヒーとたばこは大人の男の象徴であり、2つをこなしてようやく一人前の扱いだった。
コーヒーが好きな人はたばこもイケる口が多い。コーヒーとたばこは人体にとって異物であり、代謝し無毒化する必要がある。このとき同一のシステムを使うからだ。
「日本人の遺伝子」(角川新書)の著者で、国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。
「カフェインの代謝のスピードを決める酵素に影響を与える遺伝子が、CYP1A2(チトクローム450の多型のひとつ)です。いわゆる解毒遺伝子といわれ、外から入ってきた刺激物を解毒・分解します。この遺伝子が強い人はコーヒーのカフェインだけでなく、たばこのニコチンを強力に解毒・分解してくれるため、大量に飲んだり吸ったりしても、体に違和感を得ることが少ないのです」
一方で、CYP1A2遺伝子が強くない人はコーヒーを飲むと胸焼けがして胃がもたれる。大抵はたばこが苦手だ。
また、たばこを吸っているうちに、解毒・分解機能が高まることから、それまではコーヒーの代謝が遅くて、むしろコーヒーが苦手だったという人も、その解毒・分解機能が高まったせいで、コーヒー好きになるケースも少なくない。
また、コーヒーを1日4杯以上飲むと心筋梗塞リスクが高まるという研究があるが、肝臓にあるCYP1A2遺伝子を高活性型と低活性型に分けて改めて分析すると、コーヒーの大量摂取が心筋梗塞のリスクにつながるのは低活性型だけだとの報告もある。
さらに、喫煙習慣のある人は、薬によっては、たばこに含まれる成分によって肝臓にあるCYP1A2が活性化、薬の消失速度が速くなる。
そのためたばこを吸わない時よりも高い用量が必要となる場合もある。CYP1A2遺伝子は薬の代謝にも関係している。