患者が語る 糖尿病と一生付き合う法

いつでも何度でも血糖値を測定できる最新機器の使い具合

従来品でも5秒で測定
従来品でも5秒で測定(C)日刊ゲンダイ

 医学や医療機器の世界は日進月歩で、きのうまでの常識がひと息に塗りかえられるようなブレークスルーも折々に起きている。血糖測定器も、その例に漏れない。

 血糖値を自己測定したい場合、これまでは、指先に針で穴を開けて血液を絞り出し、測定器にセットした使い捨ての電極チップに吸い込ませて、しばらく待たねばならなかった。

 測定時間は、僕が患者になった当時は30秒かかっていたのが、今では5秒まで短縮されている。それも進歩には違いないのだが、昨秋から日本でも使われるようになった最新型の測定器にはかなわない。

 現在、1型、2型患者ともに保険適用であるこの機器は、いちいち血を出さずとも、肌に装着した500円玉大のセンサーにかざすだけで、いつでも何度でも測定できるのだ。

 測定しているのは、厳密には血糖値ではなく、間質液中のグルコース値なのだが、大きな誤差はない。

 何よりありがたいのは、グルコース値が現在上昇中なのか下降中なのか、あるいは横ばい状態なのかまで、5段階で同時に表示してくれることだ。

 たとえばグルコース値が80だったとする。1型糖尿病患者としては低めの値だが、上昇中なら放っておけばいい。しかし下降中なら、近いタイミングで低血糖になると予想されるので、何か補食する必要がある。低血糖だけでなく、無駄に補食するリスクも避けられる。

 僕はもともとかなり頻繁に血糖測定を行っていたが、使い捨てチップが不足しがちなのが悩みの種だった。保険が利く範囲が限られているので、使い切ってしまったら自費で買い足すしかない。

 1本140円ほどもするのが負担で、つい使い渋っているうちに低血糖で昏倒した――という苦い経験もある。今の測定器に乗り換えてから、僕は一度たりとも、意識障害を起こすレベルの低血糖には陥っていない。

 少なくとも1型糖尿病患者にとっては、救世主といっていい機器が登場したわけだ。

平山瑞穂

平山瑞穂

1968年、東京生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年「ラス・マンチャス通信」で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。糖尿病体験に基づく小説では「シュガーな俺」(06年)がある。

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