呼吸器名医が伝授 健康寿命を延ばす「飲み込む力」鍛錬法

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 ゲホゲホゲホッと食事をしている時にむせて咳込むことが増えた…。これは、飲み込む力(=嚥下機能)の低下が原因だ。池袋大谷クリニック・大谷義夫院長(日本呼吸器学会専門医・指導医)が言う。

「嚥下は、食べ物や飲み物だけでなく、唾液の無意識の飲み込みも含みます。ところが40歳代くらいから喉周りの筋力が低下し始めます。さらに、50~60歳代でラクナ梗塞を起こす人が増えます。この喉周りの筋力の低下とラクナ梗塞によって、うまく飲み込めないことが増えるのです」

 食べ物や飲み物を飲み込めないのも問題だが、もっと問題なのは、夜間睡眠中に起こるケース。

「不顕性誤嚥といって、本人が気づかないまま、口腔内の細菌を含む唾液や胃酸が気道に流れ込む。これが、高齢者の死因の多くを占める誤嚥性肺炎のリスクを上げるのです」(大谷院長)

 不顕性肺炎は、前述のラクナ梗塞が最大の要因だ。動脈硬化によって起こる小さな脳梗塞で、高齢者のMRI検査ではかなりの確率で見つかる。自覚症状はなく、日常生活に影響は及ばさないが、誤嚥性肺炎回避には多大な影響を及ぼす。

 誤嚥性肺炎の予防策として、大谷院長は次を勧める。

①肺炎球菌ワクチンの接種と口腔内ケア
「口腔内ケアをすることで、不顕性誤嚥で気道に流れ込む唾液の細菌が減ります」(大谷院長)

②動脈硬化対策
 言うまでもなく、ラクナ梗塞回避のため。高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などがあれば、その改善を。

③葉酸の補給。
「葉酸が誤嚥性肺炎のリスクを下げることが明らかになっています。葉酸が欠乏すると大脳基底核でのドーパミンの産生が低下。それによって咳反射機能や嚥下反射機能が低下して、誤嚥性肺炎を起こしやすくします」(大谷院長)

 葉酸はビタミンB群の一種。レバー、緑黄色野菜、豆類などに多い。日常的に摂取すべきだ。

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