気鋭の医師 注目の医療

がんゲノム医療は日本人のデータベース構築が急務だ

桃沢幸秀チームリーダー(提供写真)

 遺伝子バリアントは、親から子供に引き継がれた生まれつきのDNA配列の違いで、病的バリアントも遺伝する。がんの発生に伴う遺伝子変異(遺伝しない)とは別ものだ。

 国内の乳がん全体の5~10%が、病的バリアントが原因の「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」と推定されている。2013年に米国の女優アンジェリーナ・ジョリーが遺伝子検査で病的バリアントを持っていることが判明し、乳がん・卵巣がんともに通常の10倍以上発症しやすいことから、乳房と卵巣を切除したことが話題になった。

■日本の遺伝子検査数は世界の100分の1

 世界では、このような遺伝子検査が年間数十万人に行われていると推定されるが、日本でこれまで受けた人は数千人程度。どうしてなのか。

「日本の場合、これまで米国のデータベースを使った評価しかできませんでした。しかし、病的バリアントの種類は人種によって大きく異なります。米国のデータベースは日本人の情報が非常に少ないため、日本人で見つかった遺伝子バリアントが病的バリアントであるかどうかの判断が難しい場合が多くありました。それで、日本人独自のデータベース構築が急務だったのです」

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