がんと向き合い生きていく

いくら時代が変わろうと「命が一番大事」なのは変わらない

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私は、この学生はMさんのような“命の輝き”にまだ出合ったことがないのだろうと思いました。そして同時に、私の頭の中には「生産能力のない老人がどんどん増え、膨大な借金をこの学生らのような次世代に背負わせようとしている現状」が浮かんできたのです。

 しかし、それでも、どうしても「命が一番大切なんだ」という思いは変わりません。

 1994年5月26日、日本学術会議「死と医療特別委員会」では、国民全体の医療経済上の効率性に触れた箇所で「経済効率の観点から人の生死を左右せしめることは、倫理的及び宗教的に許されるものではない」としています。それから24年がたちましたが、時代は変わろうと一番大切なのは命なのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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