腎臓を守る

CKDは放っておくと人工透析前に心筋梗塞や脳卒中で死ぬ

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の状態を分かりやすくするために、原因にかかわらずステージ1から5までの6段階(ステージ3は3aと3bに分かれる)で表される。

 まず、CKDと診断されるのは①腎機能が正常な人の60%未満②尿検査などで明らかな障害が認められるのいずれか、あるいはその両方が3カ月以上続いている状態をいう。腎臓病専門医で松尾内科クリニック(東京・桜新町)の松尾孝俊院長が言う。

「ここで言う腎機能とは糸球体ろ過量(eGFR=血清クレアチニン値を基にGFR値を推定した値)のことを指します。全身を巡る血液は腎臓に集められますが、その中にはさまざまな老廃物が溶け込んでいます。それを1分間でどのくらいろ過する能力があるかを見るのです」

 もちろん、ステージ分けはeGFR値だけでなく、腎臓の障害の程度が分かる尿タンパク(糖尿病がある場合は尿アルブミンを調べる)などを加えて、総合判断で決定する。

「腎臓はガマン強い臓器なので、eGFR値が45~59の3a期(軽度から中等度低下)あるいは、同値30~44の3b期(中等度から高度低下)あたりになって初めて病院を訪れる人が多い。この時、大抵の患者さんは『腎機能が半分近く残っているから治療すれば治る』と思いがちですが、そう簡単ではありません。40歳を越えると、腎機能は加齢に応じて低下していき、元に戻ることはありません」

 CKDが進めば、腎臓本来の働きが失われるだけではない。CKDが軽度であっても、心臓病や脳卒中といった心血管イベントを起こすリスクが倍増する。

 例えば、eGFR値を使った研究で、3a期では3.65件に過ぎなかった100人当たりの年間心血管イベント発症件数が、3b期には11・29件となり、4期だと21.80件、末期の5期だと36.60件に跳ね上がることが報告されている。

「従来は慢性腎臓病になると、最終的に腎不全となり人工透析になるというのが、一般的な図式でした。ところが近年、CKDの患者さんは初期の腎機能低下の段階から心臓や脳の病気を発症するリスクばかりか、3b~5期は全死亡、脳、心血管疾患による死亡リスクが高くなるのです」

 実際、腎機能低下とタンパク尿を合併している場合、男性で2倍、女性では4倍も心筋梗塞や脳卒中で亡くなるという研究報告もあるのだ。

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