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米国で社会問題に…消防士の40%が自殺を考え7%が未遂を

 カリフォルニア州では史上最悪といわれる大規模な山火事が起こっています。79人の死亡が確認され、1300人以上が行方不明、1万3000軒の建物が焼失しました(現地時間11月18日)。8000人もの消防士が不眠不休で炎と戦っています。

 そんな中、アメリカでは消防士の自殺が社会問題になりつつあります。2015年4000人の消防士を対象に行った調査によれば、40%近くが自殺を考えたことがあり、7%は自殺未遂にまで至っていて、この数字は一般人の10倍です。17年に自殺した消防士は103人で、消化活動など仕事が原因で亡くなった93人を上回っています。

 その理由とされるのが、消防士が直面する現実です。火災や事故現場で肉体的に非常に厳しい状況の中、悲惨な光景や被災者の苦しみなど、ほかの職業ではあり得ない体験をしなければならない。それが彼らにとって大きなストレスやトラウマとなり、うつになったり自殺につながることもある。

 戦場の兵士がかかるPTSD(心的外傷後ストレス障害)とも比較されています。

 さらに、アメリカでは消防士はマッチョなヒーローとされ、こうしたストレスを訴えること自体が「男らしくない、不名誉」というような感覚がいまだに残っており、対応の遅れにつながっているといわれています。

 一方、積極的な対策に乗りだす消防当局も増えています。カリフォルニア州サンディエゴ消防局では、消防士や警察官を専門に治療する精神分析医と契約し、ストレスを訴える消防士がすぐに診察を受けられるように環境を整えました。インディアナ州インディアナポリスでは消防士のためのヨガのクラスも開催されています。

 特に若いミレニアル世代を中心に、抵抗なくこうしたセラピーやクラスを受けられるようになってきているとのことですが、より一層の対策が望まれています。

シェリー めぐみ

シェリー めぐみ

NYハーレムから、激動のアメリカをレポートするジャーナリスト。 ダイバーシティと人種問題、次世代を切りひらくZ世代、変貌するアメリカ政治が得意分野。 早稲稲田大学政経学部卒業後1991年NYに移住、FMラジオディレクターとしてニュース/エンタメ番組を手がけるかたわら、ロッキンオンなどの音楽誌に寄稿。メアリー・J・ブライジ、マライア・キャリー、ハービー・ハンコックなど大物ミュージシャンをはじめ、インタビューした相手は2000人を超える。現在フリージャーナリストとして、ラジオ、新聞、ウェブ媒体にて、政治、社会、エンタメなどジャンルを自由自在に横断し、一歩踏みこんだ情報を届けている。 2019年、ミレニアルとZ世代が本音で未来を語る座談会プロジェクト「NYフューチャーラボ」を立ち上げ、最先端を走り続けている。 ホームページURL: https://megumedia.com

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