役に立つオモシロ医学論文

毎日なら約3割減 浴槽入浴回数が多いと介護認定が少ない

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 入浴スタイルは国ごとに異なりますが、日本人はシャワーやサウナよりも、浴槽入浴が一般的かもしれません。特に温泉は日本人の入浴スタイルを象徴するものでしょう。

 ところで温泉は健康に良いイメージがありますが、浴槽入浴と健康への影響を検討した質の高い研究データは、ほとんどありませんでした。

 そんな中、浴槽入浴の頻度と身体機能の障害(介護が必要な状態)リスクの関連について検討した論文が、日本疫学会誌電子版に2018年10月27日付で掲載されました。

 この研究では、要介護認定を受けていない日本人高齢者1万3786人(男性6482人)が対象となっています。

 被験者は、浴槽入浴の頻度について、低頻度(0~2回/週)、中頻度(3~6回/週)、高頻度(7回以上/週)の3つのグループに分類され、夏季と冬季に分けて身体機能の障害リスクが比較されました。

 なお、結果に影響を与えうる、年齢、性別、認知機能状態などの因子で、統計学的に補正を行って解析をしています。

 解析の結果、浴槽入浴の頻度が高い人では身体機能の障害が少ないことが示されました。身体機能の障害リスクは、低頻度の人と比較して、高頻度の人で、夏季においては28%、冬季においては29%、統計学的にも意味のある水準で低下しました。

 毎日、浴槽入浴できる人は、そもそも健康状態が良好である可能性があり、この結果が因果関係を示すものかどうかについては議論の余地があります。また、浴槽の温度が高すぎると、体に負担がかかることもあり、入浴が有益な影響のみ与えるとは限りません。

 やはり、適度な温度、適度な時間での入浴を心がけることが大切だと思います。

青島周一

青島周一

2004年城西大学薬学部卒。保険薬局勤務を経て12年9月より中野病院(栃木県栃木市)に勤務。“薬剤師によるEBM(科学的エビデンスに基づく医療)スタイル診療支援”の確立を目指し、その実践記録を自身のブログ「薬剤師の地域医療日誌」などに書き留めている。

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