試しに特養老人ホームを見学に行くと300人以上の待機者がいて、何年待つか分からないと言われました。
朝早くから夜遅くまで、重症がん患者を診る私の勤務は続きました。ある年の正月、私が父母の介護を担当しました。夜中、呼び鈴が鳴りました。行ってみると、トイレに立った父が「汚してしまった。悪いなー」と言います。私は「大きなおむつだから、そのまま動かないでいてと言ったでしょ! こんなに汚してしまって!」と思わず声を張り上げてしまいました。親に向かって大きな声を出す自分自身が情けなくなりました。私はようやく、妻ひとりでの介護はもう無理だと実感したのです。
その後、両親を老健施設に入れていただきましたが、3カ月ごとに別の施設に移るのも大変でした。入所後、妻は食事の介助に行って、前よりも優しくしてあげられたといいます。精神的にも楽になったのです。父母も笑顔を見せることが多くなりました。
がんと向き合い生きていく