意外に知らないホルモンの実力

【副甲状腺ホルモン】カルシウム濃度を“2段構え”で調節

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「カルシウム」は、体内でどんな働きをしているかご存じだろうか。骨をつくる材料になるだけではない。むしろ、骨はカルシウムの“貯蔵庫”として重要だ。

 東京都立多摩総合医療センター内分泌代謝内科の辻野元祥部長が説明する。

「カルシウムは、生物の細胞の働きを正常に保つために欠かせません。普段、体内のカルシウム濃度は細胞の内側は低く、外側は高い。しかし、細胞が外側から刺激を受けると、細胞外から細胞内にカルシウムが流れ込み、それを引き金として細胞はさまざまな働きをします」

 つまり、カルシウムは生命活動の根幹に関わるメッセンジャー物質のような役割を果たしている。そのカルシウムの血中濃度を厳格に調整する役割を担っているのが「副甲状腺ホルモン」と「ビタミンD」だ。

 副甲状腺ホルモンを分泌する副甲状腺(上皮小体)は、のどにある甲状腺の裏側に左右2対ずつ計4個ある米粒大ほどの小さな臓器。名前は似ているが、甲状腺とはまったく関係のない独立した機能を持っている。

「骨の中のカルシウムはリンと結合して貯蔵されています。副甲状腺ホルモンは血液中のカルシウム濃度が低下すると分泌が高まり、骨に作用してカルシウムを取り出して使えるようにします。また、腎臓に働いて、カルシウムの排泄(はいせつ)を抑制し、リンの排泄を促すのです。さらに、ビタミンDの産生も高めます」

 ビタミンは通常、食物から取らないと補えない栄養素。しかし、ビタミンDだけは体内でつくることができ、ビタミンD受容体も存在するのでホルモンのひとつとされる。つくられる臓器は皮膚で、日光(紫外線)を浴びることでコレステロールから産生される。

「皮膚でビタミンDの原料がつくられ、それが肝臓、腎臓へと運ばれて活性化されたビタミンDになり、腸管からのカルシウムやリンの吸収を促す働きをします。急激なカルシウム濃度の変化は副甲状腺ホルモンが対応し、ビタミンDは時間をかけてカルシウム濃度を管理しています。このように2段構えでカルシウム不足を防いでいるのです」

 食物からのビタミンD摂取も大切で、不足すると、うつ病になったり、免疫力が低下して、がんになりやすくなることが知られている。

 ただし、骨粗しょう症の治療などで過剰摂取すると高カルシウム血症を引き起こす場合もあるので、取り過ぎにも要注意という。

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