天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

眉間のしわが深い人は心臓病リスクがアップするのは本当か

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 眉間のしわが深い人は心臓疾患で死亡するリスクがアップする――。そんな研究結果が報告されています。フランスの研究チームが約3000人の健康な成人を対象に額のしわを評価し、20年間にわたって追跡調査を実施。しわが深い人は、しわがなかった人に比べて心血管疾患で死亡するリスクは9・6倍だったといいます。

 研究者は、「しわの形成と動脈硬化にはどちらもコラーゲンの変化や酸化ストレスが関与しているため、しわが動脈硬化の初期兆候として表れるのではないか」と説明していますが、はっきりした理由はわかっていません。当然、この研究だけでは眉間のしわが心臓疾患の発症リスクを高める因子であるともいえません。ただ、心臓を守るための心がけを考えるうえで、参考になる研究報告だといえます。

 われわれが眉間にしわを寄せるのは、イライラしたり、怒ったり、不安だったり、困ったときなどです。いずれも、ストレスを受けたり、緊張していて交感神経が高まった状態です。交感神経が優位になると、神経伝達物質のアドレナリンが大量に分泌されます。アドレナリンは心拍数を増加させて血流を増やす効果と、血管を収縮させる効果で極端に血圧を上昇させます。その結果、心臓の負担が増えてしまうのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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