論文をまとめたのは、カナダの研究グループ。1995年から20年にわたって英国の高血圧患者99万2000人を追跡したところ、ACE阻害薬を服用したグループは、ARBを服用したグループに比べて肺がんの発症率が14%高かったのです。その傾向は長く服用しているほど強く、10年超服用すると、発症率は31%に上がると報告しています。
論文の内容は、あくまでも疫学研究で、ACE阻害薬と肺がん発症の因果関係を証明するものではありません。しかし、データは英国の準公的機関の数値で、なおかつサンプル数が多く、追跡期間が長いので、信頼性は高いといえます。
たかが疫学調査の結果を取り上げたのは、似たような状況がほかの薬で過去にあったのです。血糖値を下げる薬のひとつ「アクトス」(一般名ピオグリタゾン塩酸塩)とその合剤は2011年、フランスとドイツで新規患者への投与を禁止されました。長期の服用により、膀胱がんの発症リスクが高まる可能性があるとの発表を受けてのことでした。
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁