乾燥した日が続く日本列島。一般医薬品の売り上げにも木枯らしが影響を与えている。
市場調査会社「アンテリオ」が発表した一般用医薬品の10月の売上高は、過去4年で最高を記録。雨が少なく、皮膚用薬や風邪関連薬が好調だったことが要因だ。
「特に漢方薬が“葛根湯”を中心に売り上げを伸ばし、過去4年で最高の売り上げでした」(アンテリオ担当者)
葛根湯といえば、正露丸と並ぶ家庭常備薬の代表格。風邪のひき始めの肩や首筋の凝り、頭痛や鼻水など諸症状に効くユーティリティープレーヤーだ。とはいえ、1902年誕生の正露丸よりずっと歴史は古く、中国の後漢時代にはあったとされる。あまりに万能であったため、落語のヤブ医者の小噺「葛根湯医者」もできた。あらすじはざっとこんな感じだ。
「先生、どうも頭が痛くて」
「頭痛だなぁ。葛根湯をやるよ」
「先生、こっちは腹が痛いんです」
「腹痛だよ。葛根湯をやるからお飲み」
「その隣の方は?」
「付き添いでやって参りました」
「それは退屈だろう。葛根湯を飲みな」
「……」
それぐらい庶民に浸透していたとも言える。それだけに葛根湯はさまざまな製薬会社から出ている。通販サイト「LOHACO」のランキングによると、クラシエ、大峰堂薬品、御所薬舗が上位に並ぶが、他にも江戸時代創業の本草製薬、富山の北日本製薬、尼崎の阪本漢法製薬、ツムラ、第一三共ヘルスケア、ロート製薬などが葛根湯を販売している。
葛根湯の成分は、くず湯で知られる葛の根に、しょうがやシナモン、麻黄などを混ぜたもの。副作用はほぼないから、週刊誌の特集でも「医者がすすめる薬」としてよく紹介されている。子供にも安心だ。