意外に知らないホルモンの実力

【ストレスホルモン】血糖値や血圧を上昇させて体を守る

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 人がストレスにさらされたとき、体を守るために分泌されるホルモンが「コルチゾール」と「アドレナリン」だ。コルチゾールは副腎の表皮(皮質)から、アドレナリンは副腎の内部(髄質)から分泌される。東京都立多摩総合医療センター内分泌代謝内科の辻野元祥部長が言う。

「ストレスが加わると交感神経が優位になり、エネルギーが必要になります。そのようなとき、これらのストレス対応ホルモンの分泌が高まり、糖の貯蔵庫である肝臓に作用して血糖値を上昇させたり、血圧を上昇させたりして、体を守るように働くのです」

 単発的なストレスに対しては、主にアドレナリンが対応し、継続的なストレスに対してはコルチゾールが対応するような役割になっているという。

 人のストレス度を測定するときに、よく唾液検査が用いられる。これは唾液中のコルチゾール濃度を測っていて、コルチゾールは別名「ストレスホルモン」とも呼ばれている。ただし、コルチゾールの分泌は日内変動が大きく、朝の目覚める前からピークになり、午後になるほど分泌が低下していくという。

「糖質コルチコイドのひとつであるコルチゾールには、炎症やアレルギー、免疫機能を抑制する強い作用があります。医薬品の『副腎皮質ホルモン薬』や『ステロイド薬』は、この糖質コルチコイドを合成した薬です。過度なストレスを継続的に受けていると、感染症などの病気にかかりやすくなるのは、コルチゾールの分泌が常に高まり免疫力が低下するためです」

 このように、コルチゾールは生命維持に欠かせない重要なホルモン。しかし、頻度は少ないが病気によって過剰分泌や分泌低下が起こる場合もある。コルチゾールが低下するのは「副腎皮質機能低下症」だ。脳の下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)をつくる部分が自己免疫によって攻撃される病気だ。体重減少、低血糖、低血圧などを引き起こす。

「一方、過剰になるのが『クッシング症候群』。副腎皮質や下垂体に腫瘍ができて起こります。典型的な症状は、顔が真ん丸くなり、赤ら顔になる“ムーンフェース”。逆に手足は細くなり、筋力が低下します。また、食欲高進、高血圧、糖尿病、骨がもろくなったりします」

 病気の治療でステロイド薬を長期投与した場合も「医原性クッシング症候群」が起こることがあるという。何よりもストレス対応ホルモンに頼り過ぎない生活が、健康のためには肝心だ。

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