過去の研究報告によれば、有給休暇の取得は幸福度やストレスとの関連性が示されています。有給休暇が健康状態に良い影響を与える可能性があります。
そんな中、労働環境と健康に関する国際誌の電子版に、有給休暇の取得とうつ病のリスクの関連を検討した論文が2018年11月7日付で掲載されました。
この研究は、米国における45~52歳の労働者3380例を対象としたもので、40歳時の有給休暇日数と、50歳時のうつ病との関連性を検討しています。なお、結果に影響を与えうる年齢や、配偶者有無などの人口統計学的要因、収入や教育などの社会経済的要因、さらに身体的健康状態などの因子で、統計学的に補正して解析を行っています。
解析の結果、有給休暇が10日間追加されるたびに、女性におけるうつ病のリスクが29%、統計学的にも意味のある水準で低下しました。特に2人以上の子供がいる女性では、有給休暇が10日間追加されると、うつ病のリスクが38%低下することが示されています。
他方、男性においては有給休暇とうつ病のリスクに明確な関連性を認めませんでした。
この関連性が真の因果関係であると仮定すると、全年齢の女性に同じ効果が期待できるのであれば、平均有給休暇が10日間の場合、年間56万8442件のうつ病が回避され、年間29億4000万ドルのコスト削減につながると結論されています。
忙しさや人手不足など、さまざまな理由で有給休暇を取得しにくい状況は多いかもしれませんが、休暇を積極的に取得するよう促す政策や会社の方針は、特にお子さんのいる女性労働者に対して、精神面における健康状態に良い影響を与える可能性があります。
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