長寿に剣道 うつ吹き飛ばし転倒リスク減少など体力に自信

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 運動は健康作りの要のひとつ。筋肉を鍛えればさまざまなホルモンが分泌されて皮膚や内臓が若返るうえ、週1回以上、スポーツで汗を流す人の割合は年々増えている。スポーツ庁が毎年実施している生涯スポーツ率は平成29年には51・1%となり、成人の半数以上は何らかのスポーツをしていることになる。

 そんななか、子供から高齢者まで幅広い年齢層が参加している人気スポーツが剣道だ。長年剣道から離れていた人でも、再開しやすく、スポーツの中でも特殊な競技と言われている。「炎の体育会TV]「TEPPEN」「マツコ&有吉 かりそめ天国」などの剣道企画も人気で、お笑いタレントの渡辺正行、金田哲(はんにゃ)、チャンカワイ(Wエンジン)が活躍している。人気俳優・東出昌大の剣道も有名だ。全日本プロレスのリングドクターでもある弘邦医院(東京・葛西)の林雅之院長が言う。

「剣道が生涯スポーツとして人気の理由は、剣道が体力的なものを技術や精神力でカバーできるからだと言われています。年を重ねると当然体力は低下しますが、技術力と精神力を鍛えることで、強くなることも可能です。そのため高齢者であっても若い人たちと対等に戦うことが可能なのです」

 むろん、年齢に応じた剣道を目指すという楽しみ方もあり、剣道を生涯楽しむことができる。その健康効果も実証済みだ。京都学園大学健康医療学部の研究者がまとめた「高齢の剣道高段者における健康・体力と生活状況」という論文が明らかにしている。京都市内在住の60歳以上の3段から8段までの275人の生活状況や体格・体力などを調査し、同年代の一般男性のうち運動をしている群(運動群)としていない群(非運動群)と比べたもの。

 それによると、開眼片足立ち、10㍍ 歩行速度などを除けば、身長や体重などの体格面や垂直跳び、握力などの体力面での値で最も高いのは剣道群で、以下運動群、非運動群の順だった。また、日常役割機能、身体の痛み、活力、全体の健康感、社会生活機能、心の健康のいずれもが剣道群が高かったという。

「興味深いのは、剣道をしている人は健康に自信を持っていることです。“非常に健康”と言っているのは剣道群が22・5%に対して、“あまり健康でない”“健康でない”としたのは非運動群でそれぞれ12・3%、1・2%でした」(林院長)

 体力への自信も剣道群の13・8%が「大いに自信あり」としているのに対して非運動群は「少し不安」(33・8%)、「大いに不安」(3・8%)だった。

 つまずきについても剣道群の72・9%が「つまずかない」と答えているのに対して非運動群は「時々つまずく」(50・6%)、「よくつまずく」(3・8%)と転倒のリスクが高かった。

 うつに対しても剣道群が「なし」が92・2%に対して非運動群は25・0%が「うつ傾向」と答えている。

 80歳以上の人は握力が低いほど死亡率が高くなるというが、剣道群の握力は右40・3㎏、左40・2㎏に対して非運動群は34・4㎏、33・2㎏と大きな差があった。竹刀をシッカリ持って振ることは長寿につながるのかも。

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