見つけるとお座り…がん探知犬はなぜ早期発見できるのか

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写真はイメージです(C)Seregraff/iStock

 まさにお犬様。山形県金山町で、がん探知犬を使った健康診断が、40歳以上の町民を対象に、2017年、18年度の2年間にわたり行われた。

 がん探知犬とは、人間の尿のニオイなどから早期がんを発見する技術を身に付けた犬のこと。金山町の健康福祉課長によれば、昨年度は921人が尿を検体として提出。このうち、陽性と判定されたのは18人で、精密検査の結果、1人に早期がんが見つかった。

「今年は、検体を集める最終日の12月3日時点で、361人の尿が集まりました。陽性・陰性の判定が出ているのが302検体で、陽性あるいは陽性の疑いありと判定されたのは22人。このうち2人にがんが見つかりました。昨年のがんが見つかった人も含め、“早く見つかってよかった”と、掛け値なしに喜ばれました。お犬様と表現される方もいましたよ」(前出の健康福祉課長)

 金山町を含む最上地域1市4町3村は胃がんの死亡率が高く、女性の胃がん死亡率は全国ワースト。この状況を何とかしたいと考えていた町長が、日本医科大千葉北総病院外科・消化器外科の宮下正夫教授の講演を聞き、「胃がんの死亡率を下げるいい手は?」と相談したところ、がん探知犬を勧められた。宮下教授が言う。

「尿を提出するだけなので、健診を受ける人の負担が非常に少ない。今回の試みは研究の一環として行ったわけですが、1年目は想像より陽性が見つかる数が少なかった。そこで2年目は尿の量を増やし、容器も大きくするなどして、犬がもっと慎重にニオイをかげるような工夫をしました」

■センサーの開発にみ取り組む

 なぜ、がん探知犬は早期がんを発見できるのか? それは、がん患者には特殊なニオイがあるからだ。

「病院でがん患者の尿のニオイをかがせると、犬はお座りするなどの反応を必ずします。どれだけ早期のがんでも、必ずです。結果が分かった上でやっているので、当たっているかどうか、私たちもはっきり分かります。しかし健診ではがんの有無が分からない状態でニオイをかぎ分けるため、犬の反応が本当に正しいのかわからない。実際、昨年の金山町の健診では、陰性とした6人に通常の検査でがんが見つかりました。今後どうやって正確性を高めるかが課題です」

 こう話す宮下教授は、がん探知犬の研究とは別に、ニオイでがんの種類を判別するセンサーの開発にも取り組んでいる。 残念ながら、諸事情により金山町でのがん探知犬の健診は今年度で終了。12月5日に開かれた議会でも質問が寄せられるなど注目を集めた。

 なお、金山町は、白壁と切り妻屋根の「金山住宅」が街並みの基本となっている。美しい街並み散策を楽しみたい“大人”にイチ押しの場所だ。

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