がん発症の妻にしてあげた10のこと

<1>ヌードを撮る できあがりを妻はとても喜んでくれた

小宮孝泰さん(C)日刊ゲンダイ

 佳江さんに「ヌードを撮ってみないか」と切り出すと、意外にあっさりと受け入れたという。

「乳がん発症から1年が経つか経たないかぐらいでした。素直な感じで『それいいね』という返答でした。今の時代は部分摘出が可能ですが、それでも乳房の形が変わってしまうことに変わりはない。これは直接、本人に聞いたわけではありませんが、女として生まれたからには……という気持ちもあると思った。こう言っては何ですが、妻はスタイルも悪い方ではなかったし、僕と一緒にお風呂に入る女性でしたから、裸になることもいとわないだろうと」

 懇意のカメラマンT氏に2人で撮影を頼みに行くと、当然ながら奇妙な申し出に戸惑っていた。

「『実は乳がんで……』と事情を説明すると、『そういうことなら全面的に協力しよう』と快諾してくれ、率先してロケ地まで探してくれました。当初はスタジオ撮りも候補に挙がっていたと思いますが、『いいや、そうじゃない。海で撮ろう』となって6月の早朝に三浦海岸で撮影したのです。人が来ちゃうとやはりマズいので、撮影時間は1時間もなかった。朝日に向かって美しく立つ姿を今も思い出します」

2 / 3 ページ

小宮孝泰

小宮孝泰

1956年、神奈川県小田原市生まれ。明治大学卒。80年、渡辺正行、ラサール石井と「コント赤信号」でTVデビュー。91年に佳江さんと結婚。2001年、31歳の佳江さんに乳がん発症。12年に永眠。今年9月に、出会いから別れまでの出来事をつづった「猫女房」(秀和システム)を上梓。

関連記事