子供が手足に痛み…小児科も見落とす「ファブリー病」とは

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子供が手足の痛みを訴える。特に熱を出した時にひどくなる――。こういった症状があれば、もしかしたらファブリー病かもしれない。治療の第一人者である東京慈恵会医大名誉教授の衛藤義勝医師に聞いた。

 聞きなれない病名だ。しかし、症状は「よくあるもの」も含まれる。患者の訴えの多い順に挙げると、「手足の痛み」「汗をかかない、かきにくい」「疲労感」「皮膚の赤い発疹」「心機能の症状」「胃腸の症状(食後の胃痛、下痢、嘔吐、悪心など)」「神経の症状(めまい、頭痛、しびれなど)」「腎機能症状」「聴覚の症状」「脳血管の症状」など。

「最初に症状が表れた時の年齢を調べると、0~6歳が32%、7~12歳が38%で、患者の70%が小学校を卒業するまでに発症します。ところが行きつけの小児科にかかっても『そういう体質』と片付けられてしまう。発症年齢と確定診断年齢の対比の調査では、最初に症状が表れてから診断がつくまで20年かかった人が最も多いのです」(衛藤医師=以下同)

 現在、ファブリー病の治療につながっているのは約900人で、推定患者数の10分の1ほど、という指摘もある。

 ファブリー病は、細胞の中の小器官内で、α―ガラクトシダーゼという酵素の働きが弱い、あるいは酵素そのものがないことが原因で起こる病気だ。

 この酵素が弱い・ないために、本来は分解され再利用される「生きるために不要になった物質」が細胞内に蓄積し、全身にさまざまな症状が表れる。それが冒頭で紹介したものになる。生まれつきの病気で、遺伝性がある。

■加齢に伴って症状が変化する

「ファブリー病の症状では手足の痛みが全体の76%を占め、最多です。痛みの表現として『発熱時や運動した後に手足に焼ける感じの激痛が走る』『海水浴場の焼けた砂の上を歩くような痛み』などがあります。痛みの程度は日によって変わりますが、特に熱を出した時にひどく、『熱が出て、風邪の強さより、手足の痛みの方がつらかった』と表現する患者もいるほどです」

 一般的に、年齢を重ねるうちに症状が変わる。30歳半ばくらいまでは手足の痛みがメインだが、それ以降は心臓の症状(心肥大、不整脈、心不全)、腎臓の症状(タンパク尿、腎不全)が増え始め、50歳を過ぎた辺りからは脳血管の症状(脳梗塞、脳出血)が増え始める。

「ファブリー病は、脳卒中の0.36~4.9%、透析患者の0~1.7%、肥大型心筋症の0~11.8%、末梢神経障害の20.8%いるという海外のデータもあります」

 肥大型心筋症などの治療を受けている中で、循環器内科の医師がファブリー病を疑い、確定診断へつながるケースも少なくない。

「しかし、心臓や腎臓に症状が表れてからでは、重症度が増してくる。早期治療が肝要であり、20代までに確定診断されるのが望ましい。子供の頃から手足の痛みなどがあり、病名が分からない場合は、ファブリー病の診断を行っている病院をインターネットで探して受診してください」

 治療は、働きが弱い・ない酵素(α―ガラクトシダーゼ)を補充する方法などがある。これによって症状を改善するだけでなく、進行も抑えられる。「生活することにおいて、できないことがほぼなくなった」と話す患者もいる。

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