「死の問題を考え続けていると、一つだけ分かったことがありました。それは死の問題は頭で考えても決着がつかないということです。……しかし、答えがでるかどうかに僕の命がかかっていましたので、とにかく考えることだけはやめないでいると、『考える型』のようなものが自然に身についてきました。それは『体に聞く』という方法です。……具体的に動くという意味で……自分の人生を振り返るようにして過ごした場所を順々に巡って人生を再体験することを思いついた」
「……マンション近くの小川まで来ると……秋は深まって、川沿いの木は風にゆれて葉を落していました。足もとの落ち葉をひろって指でもてあそびながら、川を眺め続けました。川の水はところどころ渦を巻きながら流れていきました。水は渦の所で巻き込まれながらも、先へ先へと流れていきます。
……どれくらいそこで過ごしていたか分かりませんが、気づくと足もとに枯葉がたくさん落ちていました。大量の落ち葉を見て、ふっとこう思いました。『死は特別なことではなく自然なことだ。そして僕も自然の一部である。だから僕が死ぬのは自然なことだ』
がんと向き合い生きていく