……この旅行に満足し……もう少しで解決できる所まで問題を追い詰めたと思っていたのに、死を考えることが僕の中では必要のないことになった感じがして考えようとしませんでした」
「それから数日が経って、駅前の商店街に買い物に出かけました。横断歩道で信号待ちをしていると、視野の左上から光が射しました。太陽だったと思うのですが、見上げて光が目に入った瞬間に、『子どもだ、人生の可能性は子どものことだったんだ』と気づきました。僕の命から次の命に流れていく強いつながりを感じました。そこにはとても深い感動がありました」
「そして僕の魂が震えた時、初めて『生きたい』と思いました。そしてこれも脳内現象だと思うのですが、ずっともやもやしていた視界がすっと晴れて、遠い先まで続く1本の道が見えました。そこには人も動物も何もありませんでした。ごつごつとした岩から切り出したような道は大きくうねって続いていました。それを見た瞬間、開放感につつまれました。『そうか、この道を進めばいいのか』と一歩踏み出した時、『これで移植が受けられる』と安心しました。8カ月以上悩んでようやく心が決まりました」
がんと向き合い生きていく