子供の難病HAEとは? まぶた・唇・咽頭などが突然腫れたら

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 子供の時に発症し、認知度が低いために診断まで時間がかかる病気「ファブリー病」を、本紙11日号で紹介した。そして今回の「遺伝性血管性浮腫(HAE)」も、子供の時に発症し、診断まで時間がかかる病気だ。

 先月末、28年ぶりに新薬が発売された「HAE」は、発症から診断まで平均13・8年かかるとされる。HAEの診療ガイドライン作成、更新を担当する九州大学病院別府病院の堀内孝彦病院長は特徴を6項目挙げる。

①突然、体のさまざまな部位に腫れやむくみ、激しい痛みが起こる。数日おきや月に何度も起こす患者もいれば、数年に1度の患者もいる
②2、3日、最長1週間で症状がほぼ消える
③腫れやむくみは、限局性で非対称性
④まぶたや喉頭など重力と関係ない場所にむくみなどが生じる
⑤まぶた、唇、喉頭、消化管に生じやすい
⑥指圧痕を残さない

「じんましんは、かゆみがあり、境界線が鮮明ですが、HAEは、かゆみがなく、境界線は不鮮明です。アレルギー性血管性浮腫など複数の血管性浮腫があり、これらとの鑑別診断をしなければなりません」(堀内病院長)

 ところが、鑑別診断が必要な病気の末尾にHAEがある、そもそも鑑別診断のリストに入っていない、あるいはHAEが認知されていないなどの理由から、誤診され、確定診断に至らないケースが珍しくない。

「生理痛や子宮内膜症と言われた女性患者や、消化器の浮腫を腸閉塞など別の病気と間違われ、開腹手術をされてしまった方もいます」(堀内病院長)

 認知度の低さは病気の中でも群を抜いており、一般の人で知られていないのはもちろん、10万人以上の医師が参加する医師専用インターネットコミュニティーサイトの会員を対象に行ったアンケート調査では、「HAEを知らない・聞いたことはない」「どのような疾患か詳しく知らない」と答えた医師は約9割を占めた。

 9歳で発症したある患者は関東圏の複数の大病院で原因がわからず、夫の転勤で九州に引っ越した35歳の時、たまたま受診した病院で堀内病院長と出会い、その時のことを「初めてHAEを知っている医師に出会った」と話す。

■新薬が登場するも…

 HAEは、多くの機能を持つタンパク質C―1インヒビターが生まれつきないことが原因(C―1インヒビターの異常以外のHAEもある)。50%の確率で遺伝し、男女差はなく、大半は20歳までに発症する。

「HAEで特に伝えたいのは、喉頭浮腫による窒息や消化管浮腫による激烈な腹痛をきたす難病であり、治療開始の遅れが窒息死など重篤な結果を引き起こすことです。これまでの治療薬は自己注射できず、常備している医療機関が少ないため、喉頭浮腫など早期治療が求められる場合も、それが困難でした。しかし、新薬は自己注射が可能で、早期治療を目指せるようになりました」(堀内病院長)

 HAEは、C―1インヒビターの活性やタンパク定量を調べる検査、遺伝子解析などで確定診断する。堀内病院長は「HAEの知識があれば診断は比較的簡単」と言う。

 遺伝性の病気のため、ひとりが確定診断に至れば、ファミリーチェックで家系内の別の患者を見つけ出すことにもつながる。

 喉頭浮腫で20分で窒息死した9歳の男児は、それが最初のHAEの症状だった。また、30代で窒息死した男性は、高校時代から症状があったが病院を受診してもたらい回しされ、HAEの診断がついていなかった。彼らが最悪の事態を免れる方法があったかもしれない。HAEの診断・治療可能な病院はインターネットなどで調べられる。

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