天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

抗凝固薬は古い薬と新しい薬では価格差が50倍もある

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 ビタミンKの働きを抑えることで効果を出すワーファリンは相互作用のある食事やクスリが多い薬といえます。納豆や緑黄色野菜などを摂取しすぎると効果が弱くなってしまいますし、抗リウマチ薬や骨粗しょう症のクスリとの併用は避けなければなりません。

■効果や副作用をしっかり考えたうえで選択する

 一方、DOACはビタミンKに関与せずに作用するため、食事の相互作用が少ないうえ、個人差もそれほどなく安定した効果が得られます。

 そうした側面だけをみると、DOACのほうが優秀な印象を受けますが、しっかり考慮すべきポイントがあります。決定的に違うのは価格です。ワーファリンとDOACは、主たる効果は同じでも価格差が最も大きい常用薬のひとつなのです。

 ワーファリンの価格は1錠9・9円で、常用量が5ミリグラム程度です。1日3ミリグラムを服用する患者さんの場合、1錠1ミリグラムなので1日約30円、1カ月で900円です。3割負担で計算すると、薬代は月270円になります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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