天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

抗凝固薬は古い薬と新しい薬では価格差が50倍もある

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 かたやDOACの価格は1錠538円と、ワーファリンの50倍以上です。前述したワーファリンのケースと同じ効果を得ようとすると、1日約500円、1カ月では1万5000円となり、3割負担でも薬代は月4500円になります。抗凝固薬は他の薬も一緒に処方されるケースがほとんどなので、60日処方となると薬代だけで1万円を超えてしまうのです。

 この価格が患者さんにとってバカにならない負担になっています。先に説明したように抗凝固薬は副作用が出ない限り飲み続けなければならない薬です。しかし、継続的に飲み続けている人は全体の80%程度で、20%の患者さんは脱落してしまいます。

 薬をやめてしまう理由はいくつも報告されていますが、「費用」は非常に大きい要因になっています。当然、薬代が高くなれば脱落する人は増えるので、ワーファリンに比べてDOACは脱落率が高いのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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