天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

抗凝固薬は古い薬と新しい薬では価格差が50倍もある

順天堂大学医学部付属順天堂医院の天野篤院長(C)日刊ゲンダイ

 また、副作用についてもしっかり考えるべきポイントです。

 抗凝固薬は血液をサラサラにする分、どうしても出血しやすくなる副作用があります。薬が効き過ぎてしまうと、脳の細い血管や内臓の血管で出血するケースもあり、気づいたときは出血が広がっていて、急に意識を失ったり、ショック状態になるなど重篤な状態を招く場合があるのです。

 ワーファリンに比べ、DOACは出血に関する副作用は少ないといわれていますが、広く使われるようになったことで今後は増える可能性があります。また、胃痛、腹部の不快感、嘔吐、下痢、食道炎といった消化管に関連した副作用が報告されているのも特徴です。

 ほかにも、ワーファリンは10年以上にわたって服用していたり、コレステロール値や尿酸値が高い体質の人などは、血管の石灰化が起こりやすくなる副作用があります。該当するタイプの患者さんなど、価格が高くてもDOACの方が向いているケースもあるのです。

 今後は高齢化がますます進むことで心房細動の患者さんが増え、抗凝固薬の処方も増えるのは間違いありません。医師の言いなりではなく、効果、価格、副作用のバランスをしっかり考えたうえで薬を選択することが大切です。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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