病み患いのモトを断つ

林先生「効かない」で物議 風邪の漢方薬がよく効く服用法

「ぶるっとしたら」飲めばよく効く
「ぶるっとしたら」飲めばよく効く

 歴史的な猛暑に引きずられたのか、異常な暖冬が続いていたが、12月半ばになって気温がガクンと低下。街では、マスク姿の風邪ひきさんが目立つ。

 そんな寒気の訪れを見越したように、「林先生が驚く初耳学!」(TBS系)が先月25日の番組で、「風邪のひき始めに葛根湯を飲んでも、風邪は治らない」と放送。物議を醸している。

 が、市場調査会社アンテリオによれば、葛根湯を中心とした市販漢方薬の売り上げは10月に過去4年で最高を記録。揺るぎない漢方薬人気がうかがえる。番組の真意はともかく、「風邪に漢方薬」は定番だろうが、漢方薬は種類が多く、使い方が難しいのも事実。医薬情報研究所エス・アイ・シーの医薬情報部門責任者で、薬剤師の堀美智子氏が言う。

「いわゆる風邪に使われる漢方薬は、葛根湯のほか麻黄湯、小青竜湯などたくさんあります。どれも効くか効かないかでいうと、効きます。しかし、服用のタイミングや使い分けを誤ると、効きません。ですから、十分な効果を期待するには、適切な服用方法を守ることが大切です」

 葛根湯と麻黄湯は、風邪のひき始めに服用するのが鉄則。しかし、ひき始めの解釈は人それぞれ違う。それが“効かない派”を生む余地か。

「たとえば、仕事中に寒けを感じて、『あれ、風邪かも』と思うようなことがありますよね。『風邪のひき始め』とは、そういうとき。そこですぐに服用すると、葛根湯も麻黄湯も免疫力を上げて、体を温める働きで風邪を治してくれます。『熱があるかな』くらいのタイミングはいいのですが、熱が上がりきった状態だと、効果は薄い。添付文書に『汗をかいていないもの』と書かれているのは、そういう意味です」

■「ぶるっとしたら」で服用し体を温める

「ゴホン!といえば」という龍角散の有名なキャッチコピーは、利用するタイミングをズバリ示している。葛根湯や麻黄湯もあれと同じように、「ぶるっとしたら」のコピーで覚えて服用すればいい。それを守った上で注意したいのは、体を温めることへの対応だ。

「葛根湯などで体が温まり体温が上がるのは免疫反応ですから、それを“熱が上がった”と勘違いして解熱鎮痛剤で下げるのはよくありません。ブレーキとアクセルを一緒に踏むようなものです」

 記者も先日、咳が出てしばらくすると、寒けを感じた。そこで麻黄湯を服用。しばらくすると、体温が38・8度に上昇。体が火照ったが、6時間ほどで体温が下がると、体が軽くなり、すっかり回復。咳は出なくなっていた。

「麻黄湯はインフルエンザによる節々の痛みにも効果的で、小青竜湯は風邪による鼻炎症状のほか花粉症の鼻炎症状も抑えてくれます」

 ちょっと古いが、日本東洋医学会の「エビデンスレポート2007」には麻黄湯とタミフルを比較した研究結果が掲載されている。

 麻黄湯単独と併用、タミフル単独の3つに分けて、解熱効果を比較したところ、併用が最も解熱したものの、麻黄湯単独の方がタミフル単独より解熱効果が高かった。さらに、関節の痛みや倦怠感などを和らげる効果は麻黄湯のみでタミフルにはないから、麻黄湯の方が使い勝手がいい。

「葛根湯も麻黄湯も体を温めるので、高温に耐えうる体力があることが重要。体力がない人は、香蘇散がいいでしょう。また、症状が長引いている人は、柴胡桂枝湯がベターです」

 自宅と会社に初期用の漢方薬を用意して、ぶるっとしたら飲めばいい。

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