家事を一切やらなかった小宮さんは、結婚してから徐々に奥さんの家事を手伝うようになる。
「コメディアンとして出発した頃、先輩の『コント山口君と竹田君』の山口さん(ひろかず氏)の4畳半一間のアパートで下宿生活を始めたのですが、ガスコンロがあったのに、山口さんはコンロも流し台も使っていなかった。流し台を使っても片づけられないから、一切使わないことにしているんだ、という説明でした。僕は家事を“やめちゃう”という、そんな手があるものかと妙に感心したのを覚えています。台所仕事は中途半端にやるからいけないのだと。ですから、結婚するまで料理は一切できなかったですね」
そんな小宮さんも、結婚してから洗い物だけは率先して行っていた。
「妻が病気になる前から食後の食器洗いは率先してやっていました。一生懸命に料理を作ってくれる妻に、少しは楽をさせてあげたいという気持ちから始めたような気がします。要するに、家事のシェアです」
そのうち、奥さんの料理作りに付き合うようにもなる。最初はハンバーグの手ごねや餃子の皮に具を詰める作業などだった。
「妻は自然食品志向でしたので、味噌や梅干しも自家製でした。味噌は“寒仕込み”で、真冬の2月に造るのですが、大きなずんどう鍋で煮た大豆を細かくつぶすのが僕の役目でした。妻の場合、添加物は一切使わずに作るのが特徴です。そのうち、自分でも作ってみたらどうなるかと思い、実際にカレーとか肉野菜炒めのような簡単なものから作ってみたら、意外にできるものだと気付いた。そうこうするうち、メニューのレパートリーも増えていきました。やはり作った料理を『おいしいね』と言われるのはうれしいもので、その気持ちが分かったからこそ、妻の料理も素直に褒められるようになったのです」
料理については、佳江さんに厳しくダメ出しされた思い出も残っている。小宮さんが冷やし中華に挑戦した時、きゅうりを縦に3等分にしてから真っすぐに細切りしたという。それを見ていた佳江さんは、緑と白の色がバラバラになると指摘。確かに、彼女に言われたように初めに大きな断面の斜め輪切りにしてから縦に細切りにすると、上にも下にも緑が残る、見た目のいいきゅうりの細切りが完成した。
「今では友人らを自宅に招いて、食事をごちそうできるまでになった。食器洗いという、よい癖をつけてもらったことにも感謝しています」
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何も訓練せずに一人残されていたら、今頃は家事に右往左往していたに違いない。 (※編集部注)
=つづく
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