ステージⅣがん治療を断るとどうなる

今度は左頚部に腫れ…それでもがん治療を受けない理由

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 がん宣告から5カ月。年の瀬が近づいてきた。医者の治療を受けなくともこのまま“がん”を克服できるのでは、と思われるほど順調に“回復”したように思えていたのだが、この数週間で、今度は左頚部が腫れ、徐々に大きくなり、最初にできた右頚部の腫れと同様の状態になった。

 嚥下(えんげ)に支障をきたし、特に水分が取りにくい。気管に入り、むせるのだ。甘く見ていたわけではないが、やはり“がん”は少々手ごわいようだ。だからといって私のがん治療に関する考え、気持ちには何の変わりもない。

 私ががんの治療を断り病院を出る時、医師はこう言った。

「頚部の腫れはリンパ系を通っての転移だ。大きくなることはあっても小さくなることはない」「腫れは日ごとに大きくなり、やがて破れて血が噴き出す。栄養が取れなくなり死に至る」

 その右頚部の腫れが消えたことに関しては、医師は説明できなかった。しかし、左頚部の腫れに関しては、また同じことを繰り返す。

「リンパ系を通っての転移だ。内視鏡の検査やりませんか。意識を失って倒れたらどうしますか」

 しかし、がん宣告から5カ月経ち、頚部の腫れ以外、“がん”の症状は見えない。私は自分の選択が間違ってはいなかったと確信している。

 以前、ほかの医療機関からさじを投げられた末期がんの患者を受け入れ、独自の治療を行っている医師を何人か取材したことがあった。その中のひとりは、“病気のデパート”と自らの体を呼ぶほど、高血圧、糖尿病などで、かつて病んでいた。その医師は言った。

「私は医者だから知識は豊富。その通りやるほど症状は重くなった。そこで医学の常識にとらわれない独自の“水”療法で私の病を克服した」

 そして、こう続けた。

「人間の体を知ることは、月や火星に行くよりも何万倍も難しい」

 がん治療は、がん細胞を退治することが目的ではない。これから先の、生きていく時間のクオリティーを落とさないようにすることにある。私はそう思っている。

笹川伸雄

笹川伸雄

ジャーナリスト。1946年、宮城県生まれ。医、食、健康のジャンルを得意とし、著書に「妙薬探訪」(徳間文庫)など

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