お酒と健康 8つの疑問

飲みすぎるとDNAが傷つき がんになりやすいって本当なのか

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 体に良いもの、悪いものは突然変わる。お酒もしかりだ。長いこと「百薬の長」といわれていたのに、近頃では風向きが変わりつつある。混乱している人もいるだろう。飲む機会が増える今だからこそ、お酒にまつわる健康情報を整理したい。

【Q】お酒が大好きな40歳です。先日、酔っぱらって帰ったら、妻から「飲み過ぎるとがんになるよ」と言われました。本当ですか?

【A】確かにWHO(世界保健機関)の国際がん研究機関(IARC)は、「お酒により、世界中で300万人を超える人が亡くなっている」と発表しています。アルコールが原因で発症する病気は約60。口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、結腸、直腸と、女性の乳房にできるがんがアルコールにより発症しやすいと言います。

 お酒の発がんリスクはその量に加え、喫煙量に関係します。

 例えば食道と頭頚部(口腔・咽頭・喉頭)の発がんリスクは1日1.5合(270ミリリットル)以上の飲酒で8倍です。30pack―years(1日のたばこの箱数×年数ではじき出したたばこ量。この場合、1日1箱なら30年、2箱なら15年の量)以上の喫煙では4倍です。両方ともあれば30倍の食道がん、下咽頭がんのリスクがあるとされています。また、男性の大腸がんの4分の1は1日1合以上の飲酒によってもたらされるといわれています。

 では、なぜお酒を飲むと発がんリスクが上がるのでしょう? WHOは飲酒の発がん物質は、アルコールが分解されたときにできるアセトアルデヒドと結論付けています。

 アルコールは、主に胃や小腸の上部で吸収され、肝臓でアセトアルデヒドに代謝されます。

 このアセトアルデヒドがくせもので、せっかくアルコールが楽しい気分にしてくれたのに、嫌な気持ちにさせます。心拍数を上げ、血管を拡張させて顔を赤らめさせて頭痛を発生させ、吐き気、発汗、二日酔いなどの災いをもたらすのです。時間が経てばアセトアルデヒドは、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)のおかげで無害な酢酸へと分解されます。しかし、それまでの間アセトアルデヒドが体中の細胞のDNAを傷つけ、がんリスクが上がるというわけです。

(国際医療福祉大学病院内科学・一石英一郎教授)

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