がんと向き合い生きていく

「夢」が死の恐怖を乗り越える術になる患者さんもいる

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 国文学者の川平ひとし氏(当時57歳)は、ある病院で消化管がんの手術を受け、肝転移で再発して「もう治療法はない」と宣告され、奈落に落とされました。それから私たちの病院に転院され、ご自身の体験をこう話してくださいました。

「予想もつかない何かのきっかけで安寧になれる」「人の心の奥には、誰しも安寧になれる心を持っている」「夢で古い友人と会ったことで生きる確信を得た」

 その時は「先生に負担をかけるから」と言って、これ以上は話されませんでしたが、後日、詳しい内容について奥さまからお手紙をいただきました。以下がその抜粋です。

 ◇  ◇  ◇ 

 夢に入るや否や、それは普段見るものとは全く異なった世界のものである事が感じられた。尋常でない強い緊張感と圧迫感が張り、どこか聖性を帯びた秘儀的な恐ろしさが充満し、戦慄を覚えたが激しく魂は揺さぶられ、魅了された。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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