夢に強いられ、現実での作業が始まりました。 友人は画家でした。友人が伝えたかったことは何か。手がかりを求めて、友人の作品の写真を集めました。一作だけ、真作が身近にありました。その画からはメッセージを発見できませんでした。しかしその画の下に、全く異なる絵が見つかりました。真作の下に潜んでいた描きさしは、「ピレネー山」の画でした。 「ピレネー」と言えば、川平は個人的に一つの強いイメージを抱いていました。青年期の愛読書の一つに、ヴァルター・ベンヤミンの著作がありました。ユダヤ人ベンヤミンはナチスに追われ、仲間とともにピレネー越えを敢行しますが、途中で追いつかれたと思いすごし、絶望のあまり生還の可能性を自ら捨て、自分から命を絶ってしまいます。しかし、希望を捨てなかった仲間はピレネー越えを成功させました。
「絶望するな、ピレネーを越えよ」
これが友人のメッセージであると解けました。川平は夢から生きる確信を得たのでした。
がんと向き合い生きていく