小倉智昭は手術で全摘 膀胱がんで知っておくべき4つのカギ

全摘後は男の機能を失うことも(写真はイメージ)
全摘後は男の機能を失うことも(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 無事手術が終了――。膀胱がんによる膀胱全摘手術でフジテレビ系「とくダネ!」を休養しているキャスターの小倉智昭さん(71)が、番組にメッセージを寄せた。膀胱がんは、手ごわいがんのひとつだ。独協医科大学埼玉医療センター泌尿器科准教授の井手久満医師が言う。

「膀胱がんは比較的進行が速く、転移しやすい。数カ月診断が遅れるだけでステージ(病期)が進み、治療の選択肢が狭まることがあります。早期発見で膀胱全摘を免れても、再発頻度が高い。再発を繰り返し、結果的に膀胱全摘に至ったり、生命予後が低くなったりするケースもあります」

 膀胱がんでより良い治療選択をするには何を知っておくべきか? 井手医師に聞いた。

■早期発見のカギ

 血尿を見逃さない、甘く見ない、に尽きる。

「中高年以上で血尿を認めた場合、膀胱がんの可能性を考慮しなければなりません。特に、50歳以上では、血尿の最も多い原因が膀胱がんです」

 早期ではほとんどが、痛みなどの症状はない。見た目では血尿と分からず、健診などで発見されることも。そのため、仕事の忙しさを理由に放置する人もいるが……。

「膀胱は表面から粘膜、筋層、脂肪という組織構成で、どの組織まで広がっているか、さらにリンパ節や他の臓器への転移があるかで治療が決まります。広がりが粘膜までなら内視鏡による治療が可能になり(例外もある)、筋層まで広がれば膀胱全摘となる。血尿ですぐに検査を受けていれば内視鏡でOKだった人が、診断が遅れたため膀胱全摘が必要になったり、あるいは転移して完治が見込めなくなることもあるのです」

■リスクが高い人

 何といっても喫煙者だ。コーヒーとの関連を指摘する声もある。

「喫煙と膀胱がんの関係は明らか。コーヒーに関しては意見が分かれています」

■全摘すべき?

 膀胱全摘となると、「尿路変向術」が同時に行われる。別の方法で尿を排出できるようにするのだ。男性の場合、小腸の一部に尿管をつなぎ、それを腹部の皮膚に縫い付け尿の排出口にする「回腸導管」や、小腸あるいは大腸を縫い合わせて作った新膀胱を尿道につなぐ「自排尿型新膀胱造設術」などがある。いずれにしろ身体的変化があり、心理面や生活の質に影響を及ぼす。そのため膀胱温存を望む声もあり、抗がん剤や放射線の治療、抗がん剤あるいはBCG(ウシ型弱毒結核菌)の膀胱内注入療法など、さまざまな方法が取られている。

 しかし、前述のように膀胱がんは進行が速いため、別の治療をやっている間にがんが広範囲に及んで、完治が望めなくなるケースがある。

「現在、膀胱温存のために取られている治療法は、奏効率が良いわけではありません。ケース・バイ・ケースですが、膀胱温存への過度なこだわりは、捨てた方がいい。膀胱全摘は、完治を見込める治療法だということを忘れてはいけません」

 今年4月から、手術支援ロボット「ダビンチ」を用いた膀胱摘出手術が保険適用になった。膀胱全摘であっても、術中・術後の患者の負担はかなり軽くなっている。

■再発予防は可能か

 筋層にまで広がっていない膀胱がんでは、内視鏡でのがん切除が可能だが、再発を繰り返す可能性がある。

「少なくとも5年目までは、3カ月に1度は再発チェックの検査が必要です。最近は、アミノレブリン酸という薬を投与すると、膀胱がんが赤く光って発見しやすくなる光力学診断システムが登場して、検査でも患者さんの負担は軽くなっています」

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