■全摘すべき?
膀胱全摘となると、「尿路変向術」が同時に行われる。別の方法で尿を排出できるようにするのだ。男性の場合、小腸の一部に尿管をつなぎ、それを腹部の皮膚に縫い付け尿の排出口にする「回腸導管」や、小腸あるいは大腸を縫い合わせて作った新膀胱を尿道につなぐ「自排尿型新膀胱造設術」などがある。いずれにしろ身体的変化があり、心理面や生活の質に影響を及ぼす。そのため膀胱温存を望む声もあり、抗がん剤や放射線の治療、抗がん剤あるいはBCG(ウシ型弱毒結核菌)の膀胱内注入療法など、さまざまな方法が取られている。
しかし、前述のように膀胱がんは進行が速いため、別の治療をやっている間にがんが広範囲に及んで、完治が望めなくなるケースがある。
「現在、膀胱温存のために取られている治療法は、奏効率が良いわけではありません。ケース・バイ・ケースですが、膀胱温存への過度なこだわりは、捨てた方がいい。膀胱全摘は、完治を見込める治療法だということを忘れてはいけません」