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有名歌手の主治医が教える “老け声”に隠れる恐ろしい病気

山王病院・国際医療福祉大学東京ボイスセンター長の渡邉雄介医師
山王病院・国際医療福祉大学東京ボイスセンター長の渡邉雄介医師(C)日刊ゲンダイ

「声がヤバすぎて試合に集中できない」「声、もうボロボロ」――。プロ野球解説者の衣笠祥雄さんは4月に大腸がんで亡くなる直前、テレビ中継での異様なしわがれ声に、ファンから心配の声が上がっていた。ひょっとすると不調と関係していたのかもしれない。

「健康や長寿のカギは声と声筋にあります」

 こう言うのは、山王病院・国際医療福祉大学東京ボイスセンター長(同大学医学部教授)の渡邊雄介医師。有名歌手の主治医も務める渡邊医師は、声の変化を見過ごしがちな私たちに対し、警鐘を鳴らす。

「声帯を中心にした5つの筋肉で構成される内喉頭筋を、私は“声筋”と呼んでいます。声筋で声帯が閉じ、声帯の振動で生じる音が声です。ところが声筋が衰えたり、トラブルがあると、声帯がしっかりと閉じられなくなる。それが、声の変化となって表れているのです」(渡邊雄介医師=以下同)

 声帯は体のさまざまな機能に関係している。たとえば、「力を出す」。最大限に力を込める時、声が出ることがある。声帯がしっかり閉じ、より大きな力が出せるからだが、もし声帯が閉じなければ、胸郭が安定せず、上体が不安定になり、力を出せなくなる。重い荷物が持てないだけでなく、高齢者では足元がふらつきやすくなり、転倒によるケガや骨折を引き起こしかねない。

「喉頭炎や声帯ポリープなどが隠れているケースもあります。大動脈瘤や肺がん、甲状腺がん、食道がん、脳腫瘍など命にかかわる重大病であることも。特に大動脈瘤は、全体の2割が声が出ないことから病気が見つかっています」

 また、かすれ声は日常生活にも影響を及ぼす。“よい声”は説得力があり、異性を魅惑する。

「日頃から声の変化に注意し、同時に声筋の若さを保つ努力をする。声筋は加齢とともに衰えますが、筋力と同様に、鍛えることで、“フケ声”を回避できるのです」

 エビデンス(科学的根拠)のある方法として渡邊医師が勧めるのが、「の↗の↘発声法」。「のー」を低音から高音まで鼻に抜けるように発声し、「のー」を高音から徐々に低くしていく。

 声の10歳若返りを目指そう。

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